こんにちは。飛騨の漢方治療専門動物病院「はるじろう漢方ペットクリニック」の佐藤です。
ひとでは漢方薬の効果は、すぐに現れる人と現れにくい人がいるといわれます。
証(体質などを含む東洋医学的診断)が合っていても効きにくい場合があるようです。
漢方薬に含まれる有効成分の多くは、配糖体として存在しています。
この配糖体はそのままでは体内に吸収されにくいのですが、腸内細菌の酵素によって糖が切り離されることで、初めて薬効を発揮することができるのです。
配糖体を代謝する腸内細菌の種類や割合が人それぞれ違うため、同じ漢方薬でも効き目に個人差がでると考えられます。
例えば便秘薬として有名な生薬である大黄(ダイオウ)の有効成分はセンノシドという配糖体ですが、腸内細菌の代謝を受けて、セニジンを経てレインアンスロンとなり、これが腸の蠕動運動を亢進させ排便を促します。
甘草の成分のグリチルリチンも腸内細菌の産生する酵素によって変換されてから抗炎症作用を発揮します。
漢方薬にはこれらの生物活性成分が複数含まれ、腸内細菌に代謝され複雑に作用していると考えられます。
その働きの詳細はなかなか解明できませんが、腸内細菌が漢方薬の有効性に大いに関わっていると言えるでしょう。
ところで腸内細菌といえば、牛さんです!
牛は人間が分解できない植物の繊維質を主要なエネルギー源にしていますが、これは牛の第一胃(ルーメン)内の腸内細菌たちのおかげ。
牛の胃袋は人とは異なり全部で4つの胃袋がありますが、最も大きな第一胃(ルーメン)には多くの微生物(細菌や真菌など)が存在しています。
これらの微生物によって、牧草の食物繊維は「揮発性脂肪酸」になり、効率よく脂肪やエネルギーとして利用できるようになります。
牧草に含まれる少ない蛋白質も微生物によって質の高いたんぱく質に変換されています。
こんなすごい微生物発酵タンクのある牛さん。
植物性の生薬から抽出した漢方薬は有効成分をすぐに効率よく吸収してくれることが予想されます。
以前、ブラウンスイス牛のひなちゃんが、風邪をひいて鼻水、咳などがひどくなったことがあり、漢方薬を人の5倍量でのませたところ、すぐに症状が軽くなり、牛に対する漢方薬の効きの良さを実感したことがありました。
体重でいえば人の10倍ほどありますのにね。
腸内細菌が大事なのは犬、猫さんでも同じです。
病気が長引くと、それだけでも腸内細菌叢は変化しますが、長期の投薬、複数の投薬によって腸内細菌叢は健康な時のものとは異なってしまっています。※
漢方薬の効果も、初期に開始するものと比べて切れのいい効果は感じづらい印象です。
(病気が長引くと、証も複雑になり治療が難しくなるということもあるのですが…)
特に下痢の時は、腸内細菌が乱れて消化吸収能の低下もあり、治療になかなか反応してくれない事もあります。
何事も早めの対処と、普段からの腸活が大事ですね!
腸を元気にして、病気予防に努めていきましょう!
参考※JIHS「薬の種類や多剤併用が及ぼすヒト腸内細菌への全貌を解明」
ブラウンスイス牛のひなちゃん
秋も深まり、食べられる牧草が少なくなってきました。乾草を朝晩運んでいます。
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