こんにちは。飛騨の漢方専門動物病院「はるじろう漢方ペットクリニック」の佐藤千絵子です。 先日、「飼い犬が椅子から落ちて心配だ」と、電話がかかってきました。 うちの病院は基本的に、内科の診療になりますが、急な症状、事故などの時には、相談の電話が時々かかってきます。 かかりつけの病院がお休みだと、不安になることでしょう。 この子の場合は、落ちる際に足をひねったのか、かばって歩いていたけど、しばらくして元通りになったようです。 何か起きたとき、一番大事なのは、急いで、検査や処置が必要な状態かどうかを見極めることです。 身体を強く打ったという状況に関して言えば ・ぐったりしている ・呼吸が荒い ・歯茎や舌の色が白っぽい、もしくは紫色 ・頻回の嘔吐 といった症状があれば、救急でやっている動物病院へすぐに連れていく必要があります。 もちろん、その他の症状でも心配であれば、連れて行ってください。 緊急性がそれほど高くない場合は、食欲、おしっこは出るか、呼吸数はどれくらいか、身体のどこが痛そうか、などを観察して、病院が開き次第すぐに連れて行ってください。 足だけを打って、足をかばっているという状態であれば、安静にしているうちに自然とよくなることがほとんどです。病院へ行けば、痛み止めを処方してくれるでしょう。 足の細い子はすぐに骨折してしまいます。全く足をつかないようなら、様子を見ずに病院へ行ってください。 こういった外傷の場合、漢方薬の出番はないように思われるかもしれません。 しかし、捻挫や骨折にも漢方薬は有用に働いてくれるんですよ! 折れた骨を漢方薬でくっつけることはできませんが、 腫れや痛み、皮下出血を早く取り除き、組織の修復を促すことができるのです。 腫れや、痛み、酷い内出血などは長引くことも多く、つらいものです。 これらの症状は、「瘀血」という病態(血液が滞っている状態)から生じると考えます。 漢方ではこの瘀血を素早く解消するために「駆瘀血剤」といわれる処方を使用し、症状の早期回復を目指します。 打撲などの外傷で使われる代表的な駆瘀血剤を挙げてみます。 ・治打撲一方 名前の通り、打撲などによる組織の障害、炎症を治すために作られた処方です。 内出血を吸収して血行を良くし、傷ついた組織を除き修復します(駆瘀血作用)。痛みや炎症を鎮めます。 ・桂枝茯苓丸 婦人科系疾患や更年期障害に頻用されていますが、人では、打撲傷の保険適応も有しています。 治打撲一方と同様に駆瘀血作用により、血腫を取り除き血行を良くして、治癒を早めるよう働きます。 ・通導散 駆瘀血作用の強い方剤で、ねんざやむちうちなどによく使います。 頭部の外傷では、治打撲一方(頭部の血流をよくする生薬が配合されている)ではなく、通導散の方が安心です。 その他にも駆瘀血剤はまだありますし、これらを組み合わせてさらに効果を高めるよう使用します。 しかーし、 治打撲一方や通導散には、“大黄”という生薬が入っていて、便を緩くする作用があります。 受傷直後の腫れ、内出血、痛みがあるといった状態は、いわゆる“わるいもの”がたまっている状態なので、それを除くには、下痢をさせて出させる方が、早く治るのです。 そこで、下痢をさせるのは嫌だという飼い主さんには、積極的な治療ができなくなってしまうのでした。 それでも、漢方の効果を実感していただきたいので そんな飼い主さんにはぜひ、自分が受傷した際に(ドアに指を挟んでぱんぱんに腫れたり内出血がひどいとか)、漢方薬を使っていただきたいと思います。 驚くほど即効的に効果を実感できるはずですよ。しっかり下痢してくださいね! また、外傷による痛みや炎症をとるためには消炎鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)を使用することがありますが、腎機能への影響や、他の副作用を考えるとなるべく使いたくないものです。 そんな時にも、これらの漢方薬は強い味方になってくれます。 また、慢性的な関節の痛みのある子は、その場しのぎの痛み止めよりも、 原因となっている「瘀血」と「水滞」を除く漢方薬の方が有効ではないでしょうか? 慢性の痛みには、下痢をさせる必要はないですからね。 漢方薬には、即効性を求めるものも、慢性病に対して長期に服用するものもあります。 気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。


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